大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和48年(ワ)437号 判決

原告 森山茂樹

被告 国 ほか一七名

訴訟代理人 吉田和夫 ほか一名

主文

一  〈省略〉

二  被告瀬戸山蒐は、原告に対し、原告が別紙二物件目録2の(一)ないし(二)記載の各土地につき、別紙四清算金目録2の(一)ないし(二)記載の各金員を支払うのと引換えに、別紙六本登記手続目録2の(一)ないし(三)記載の各本登記手続をそれぞれなし、かつ右各土地を引渡せ。

三  〈省略〉

四  原告に対し

1  被告国、同津屋崎町、同野見山佐一、同株式会社日動製作所および同長谷薫太郎は、原告が被告国に対し金五七三万九、九三三円を支払うのと引換えに、別紙二物件目録2の(一)記載の土地につき、

2  被告国、同津屋崎町、同野見山佐一および同株式会社日動製作所は、原告が被告国に対し金一三万六、七二三円を支払うのと引換えに、同目録2の(二)記載の土地につき、

3  被告野見山佐一、同国、同津屋崎町、同松島興産株式会社および同株式会社日動製作所は、原告が被告松島興産株式会社に対し金五万九、六〇〇円を支払うのと引換えに、同目録2の(三)記載の土地につき、

4  被告野見山佐一、同国、同津屋崎町、および同株式会社日動製作所は、原告が被告国に対し金八〇万九、七〇三円を支払うのと引換えに、同目録2の(四)記載の土地につき、

5  被告野見山佐一、同国、同津屋崎町、同松島興産株式会社および同株式会社日動製作所は、原告が被告松島興産株式会社に対し同目録2の(五)記載の土地につき金二六万五三六円を、同目録2の(六)記載の土地につき金一万一、〇六九円を、同目録2の(七)記載の土地につき金一三万一、一二〇円を、同目録2の(八)記載の土地につき金一三五万二、九一〇円を、同目録2の(九)記載の土地につき金三〇万四、八一〇円を支払うのと引換えに、右各土地につき、

6  被告野見山佐一、同国、同津屋崎町、および同株式会社日動製作所は、原告が被告国に対し同目録2の(十)記載の土地につき金九万三、六五八円を、同目録2の(十一)記載の土地につき金二九万七、九九八円を支払うのと引換えに、右各土地につき、

原告が第二項掲記の各本登記手続をなすことを承諾せよ。

五  〈省略〉

六  原告に対し、

1  被告村上繁夫は、別紙二物件目録2の(一)記載の土地につき、

2  被告永弘開発株式会社は、同目録2の(一)ないし(十一)記載の各土地につき、

3  被告元木守、同三枝ヨシノ、同三枝茂、同三枝保二、同山本隆、同三枝直、同三枝サダエおよび同三枝稔は、同目録2の(二)ないし(十一)記載の各土地につき、原告が第二項掲記の各本登記手続をなすことを承諾せよ。

七  被告松島興産株式会社は、原告に対し、原告が同被告会社に対し別紙二物件目録2の(三)、(五)、(六)、(七)、(八)、(九)記載の各土地につき、別紙四清算金目録2の(三)、(五)、(六)、(七)、(八)、(九)記載の各金員を支払うのと引換えに、右各土地を引渡せ。

八  原告のその余の請求を棄却する。

九  訴訟費用は、原告と被告瀬戸山蒐、同瀬戸山道子、同永弘開発株式会社、同元木守、同村上繁夫、同三枝ヨシノ、同三枝保

二、同三枝茂、同山本隆、同三枝直、同三枝サダエおよび同三枝稔との間においては、右各被告らの負担とし、原告と被告国、同津屋崎町、同野見山佐一、同株式会社日動製作所、同松島興産株式会社および同長谷薫太郎との間においては、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判〈省略〉

第二当事者の主張

一  請求原因

1(一)  被告瀬戸山蒐(以下、たんに被告蒐という。)は、昭和三六年一〇月二〇日、被告村上から一〇九万円を弁済期同年一二月末日、利息月三分として借り受け、その際、被告瀬戸山道子(以下、たんに被告道子という。)は、右借受金債務を担保するため、被告蒐が右弁済のできないときは被告村上に被告道子所有の別紙一物件目録1の(一)記載の土地(以下、たんに本件1の(一)土地という。)を右金額で売ることを予約したうえ、右土地につき、福岡法務局福間出張所昭和三六年一〇月二三日受付第四、一一一号をもつて所有権移転請求権保全仮登記を経由した。

(二)  被告蒐は、昭和三六年一〇月二〇日、被告村上から九一万円を弁済期同年一二月末日、利息月三分として借り受けるとともに、右弁済のできないときは同被告に被告蒐所有の別紙二物件目録2の(一)記載の土地(以下、たんに本件2の(一)土地という。)を右金額で売ることを予約したうえ、右土地につき、同出張所昭和三六年一〇月二〇日受付第四、〇九八号をもつて所有権移転請求権保金仮登記を経由した。

(三)  原告は、昭和四一年一二月二三日、被告村上から右(一)、(二)の各貸付金債権および各売買予約完結権を譲り受けたうえ、本件1の(一)土地につき、同出張所昭和四一年一二月二六日受付第一二、五一九号をもつて、また、本件2の(一)土地につき、同出張所同日受付第一二、五二〇号をもつていずれも所有権移転請求権移転登記を経由するとともに、被告村上は、昭和四二年八月二七日到達の内容証明郵便をもつて、被告蒐に対し右各貸金債権および本件2の(一)土地についての売買予約完結権を、被告道子に対し本件1の(一)土地についての売買予約完結権をいずれも原告に譲渡した旨通知した。

(四)  原告は、昭和四二年九月二日到達の書面をもつて、担保の実行として、被告蒐に対し本件2の(一)土地を、被告道子に対し本件1の(一)土地を買い受ける旨の売買予約完結の意思表示をした。

2(一)  〈省略〉

(二)  被告蒐は、昭和三六年一〇月七日、亡三枝から三〇万円を弁済期同年一二月末日、利息月三分として借り受けるとともに、右弁済のできないときは亡三枝に被告蒐所有の別紙二物件目録2の口記載の土地(以下、たんに本件2の(二)土地という。)を右金額で売ることを予約したうえ、右土地につき、同出張所昭和三六年一〇月一三日受付第四、〇四七号をもつて所有権移転請求権保全仮登記を経由した。

(三)  〈省略〉

(四)  被告蒐は、昭和三七年四月一八日、亡三枝から三五万円を弁済期同年一二月末日、利息月三分として借り受けるとともに、右弁済のできないときは亡三枝に被告蒐所有の別紙二物件目録2の(三)ないし(十一)記載の各土地(以下、たんに本件2の(三)ないし(十一)各土地という。)を右金額で売ることを予約したうえ、同出張所昭和三七年四月二四日受付第一、三三〇号をもつて所有権移転請求権保全仮登記を経由した。

(五)  原告は、昭和四一年一二月二三日、亡三枝から右(一)ないし(四)の各貸付金債権および各売買予約完結権を譲り受けたうえ、本件1の(二)、(三)円各土地につき、同出張所昭和四一年一二月二六日受付第一二、五二五号をもつて、本件1の(四)ないし(十)各土地につき、同出張所昭和四二年一月四日受付第四号をもつて、本件2の(二)土地につき、同出張所昭和四一年一二月二六日受付第一二、五二四号をもつて、本件2の(三)ないし(十一)各土地につき、同出張所同日受付第一二、五二五号をもつていずれも所有権移転請求権移転登記を経由するとともに、亡三枝は、昭和四二年八月二七日到達の内容証明郵便をもつて、被告蒐に対し右貸金債権および本件2の(二)ないし(十一)各土地についての売買予約完結権を、被告道子に対し本件1の(二)ないし(十)各土地についての売買予約完結権をいずれも原告に譲渡した旨通知した。

(六)  原告は、昭和四二年九月二日到達の書面をもつて、担保の実行として、被告蒐に対し本件2の(二)ないし((十一))各土地を、被告道子に対し本件1の(二)ないし(十)各土地を買い受ける旨の売買予約完結の意思表示をした。

3  〈省略〉

4  ところで、本件各土地の鑑定評価額は別紙七計算表1の(二)に記載のとおりであるところ、同表記載のとおり、その適正評価額(右鑑定評価額の八割がそれにあたる。)から貸付金、遅延損害金(期間は昭和三八年一一月一日から同五一年六月三〇日までで、その利率は一〇〇万円未満にあつては年一割八分、一〇〇万円以上にあつては年一割五分)および鑑定料(第一、二回)合計一一万円を各貸付金元本によつて按分した金額を控除したものが、原告の引換えに支払うべき清算金である。

5  〈省略〉

6  また、被告らは別紙二物件目録2記載の各土地につき次のとおりの各登記をなしている。即ち、

(一) 本件2の(一)土地につき、

(1) 被告国は昭和四〇年九月九日受付第六、九三一号差押登記、昭和四〇年一一月二日受付第八、六三八号仮差押登記、

(2) 同村上繁夫は昭和三六年一〇月二〇日受付第四、〇九九号賃借権設定登記、

(3) 同野見山佐一は昭和三八年一月一七日受付第四八号根抵当権設定仮登記、昭和四八年九月四日受付第一二、〇六九号根抵当権設定登記、昭和四九年二月二七日受付第二、四四三号任意競売申立登記、

(4) 同永弘開発株式会社は昭和三八年七月三一日受付第一、九二三号根抵当権設定請求権保全仮登記、

(5) 同株式会社日動製作所は昭和四二年三月二日受付第一、七九四号停止条件付所有権移転仮登記、同日受付第一、七九一号根抵当権設定登記、同日受付第一、七九二号停止条件付賃借権設定仮登記、

(6) 同津屋崎町は昭和四〇年一一月一七日受付第九、〇六三号参加差押登記、昭和四八年五月二四日受付第七、四二九号参加差押登記、

(7) 同長谷薫太郎は昭和四三年一一月六日受付第一三、三六六号抵当権設定仮登記、

(二) 本件2の(二)土地につき、

(1) 被告元木守は昭和三九年三月一三日受付第八五九号所有権移転請求権保全仮登記、

(2) 同国は昭和四〇年九月九日受付第六、九三一号差押登記、昭和四〇年一一月二日受付第八、六三八号仮差押登記、

(3) 亡三枝仙太は昭和三六年一〇月一六日受付第四、〇六六号賃借権設定登記、

(4) 同津屋崎町は昭和四〇年一一月一七日受付第九、〇六三号参加差押登記、昭和四八年五月二四日受付第七、四三〇号参加差押登記、

(5) 同野見山佐一は昭和三八年一月一七日受付第四八号根抵当権設定仮登記、昭和四八年九月四日受付第一二、〇六九号根抵当権設定登記、昭和四九年二月二七日受付第二、四四三号任意競売申立登記、

(6) 同永弘開発株式会社は昭和三八年七月三一日受付第一、九二三号根抵当権設定請求権保全仮登記、

(7) 同株式会社日動製作所は昭和四二年三月二日受付第一、七九一号根低当権設定登記、同日受付第一、七九二号停止条件付賃借権設定仮登記、同日受付第一、七九四号停止条件付所有権移転仮登記、

(三) 本件2の(三)、(四)各土地につき、

(1) 被告元木守は昭和三九年三月一三日受付第八五九号所有権移転請求権保全仮登記、

(2) 同国は昭和四〇年九月九日受付第六、九三一号差押登記、昭和四〇年一一月二日受付第八、六三八号仮差押登記、

(3) 亡三枝仙太は昭和三七年四月二四日受付第一、三三一号賃借権設定仮登記、

(4) 一同野見山佐一は昭和三八年一月一七日受付第四八号根抵当権設定仮登記、昭和四八年九月四日受付第一二、〇六九号根抵当権設定登記、昭和四九年二月二七日受付第二、四四三号任意競売申立登記、

(5) 同永弘開発株式会社は昭和三八年七月三一日受付第一、九二三号根抵当権設定請求権保全仮登記、

(6) 同株式会社日動製作所は昭和四二年三月二日受付第一、七九一号根抵当権設定登記、同日受付第一、七九二号停止条件付賃借権設定仮登記、同日受付第一、七九四号停止条件付所有権移転仮登記、

(7) 同津屋崎町は昭和四〇年一一月一七日受付第九、〇六三号参加差押登記、

(四) 本件2の(五)ないし(九)各土地につき、

(1) 亡三枝仙太は昭和三七年四月二四日受付第一、三三一号賃借権設定仮登記、

(2) 被告野見山佐一は昭和三八年一月一七日受付第四八号根抵当権設定仮登記、昭和四八年九月四日受付第一二、〇六九号根抵当権設定登記、昭和四九年二月二七日受付第二、四四三号任意競売申立登記、

(3) 同永弘開発株式会社は昭和三八年七月三一日受付第一、九二三号根抵当権設定請求権保全仮登記、

(4) 同株式会社日動製作所は昭和四二年三月二日受付第一、七九一号根抵当権設定登記、同日受付第一、七九二号停止条件付賃借権設定仮登記、同日受付第一、七九四号停止条件付所有権移転仮登記、

(5) 同元木守は昭和三九年三月一三百受付第八五九号所有権移転請求権保全仮登記、

(6) 同国は昭和四〇年九月九日受付第六、九三一号差押登記、昭和四〇年一一月二日受付第八、六三八号仮差押登記、

(7) 同津屋崎町は昭和四〇年一一月一七日受付第九、〇六三号参加差押登記、

(五) 本件2の日(三)、(五)ないし(九)各土地につき、大松産業株式会社は、被告蒐から交換により各所有権を取得してその旨昭和四二年一〇月二〇日受付第一〇、五七五号をもつて各所有権移転登記を経由したところ、松島第一商事株式会社は、右大松産業株式会社から会社合併により各所有権を取得してその旨昭和四六年一一月一〇日受付第一一、三一一号をもつて各所有権移転登記を経由し、更に、被告松島興産株式会社は、右松島第一商事株式会社から会社合併により各所有権を取得してその旨昭和五一年四月一七日受付第四、七〇〇号をもつて各所有権移転登記、

(六) 本件2の(十)、(十一)各土地につき、

(1) 被告元木守は昭和三九年三月一三百受付第八五九号所有権移転請求権保全仮登記、

(2) 同国は昭和四〇年九月九日受付第六、九三一号差押登記、昭和四〇年一一月二日受付第八、六三八号仮差押登記、

(3) 亡三枝仙太は昭和三七年四月二四日受付第一、三三一号賃借権設定仮登記、

(4) 同野見山佐一は昭和三八年一月一七日受付第四八号根抵当権設定仮登記、昭和四八年九月四日受付第一二、〇六九号根抵当権設定登記、昭和四九年二月二七日受付第二、四四三号任意競売

申立登記、

(5) 同永弘開発株式会社は昭和三八年七月三一日受付第一、九二三号根抵当権設定請求権保全仮登記、

(6) 同株式会社日動製作所は昭和四二年三月二日受付第一、七九一号根抵当権設定登記、同日受付第一、七九二号停止条件付賃借権設定仮登記、同日受付第一、七九四号停止条件付所有権移転仮登記、

(7) 同津屋崎町は昭和四〇年一一月一七日受付第九、〇六三号参加差押登記、昭和四八年五月二四日受付第七、四三〇号参加差押登記、

7  被告松島興産株式会社は、本件2の(三)、(五)ないし(九)各土地を占有している。

8  亡三枝仙太は、昭和四五年五月六日死亡したところ、被告三枝ヨシノはその妻、同三枝茂、同三枝保二、同山本隆、同三枝直、同三枝サダエおよび同三枝稔はいずれも右仙太の子である。

9  よつて、原告は、被告蒐および同道子に対しては、請求の趣旨1および2に掲記の各金員の支払いと引換えに本件各土地につき売買予約完結を原因とする所有権移転の各本登記手続およびその引渡しを求め、その余の被告らに対しては、右各本登記手続をなすについて同被告らが登記上の利害関係を有する第三者であるから、原告が右各本登記手続をなすにつき承諾を求め、更に被告松島興産株式会社に対しては、その占有している各土地の引渡しを求めて本訴に及んだ。

二  請求原因に対する認否〈省略〉

三  被告らの抗弁

(被告瀬戸山蒐、同瀬戸山道子、同津屋崎町、同野見山佐一、同株式会社日動製作所、同長谷薫太郎)〈省略〉

(被告国)

被告蒐は昭和五〇年一〇月二〇日現在昭和三七年度申告所得税一八二万二、四五〇円、加算税一八万三、八〇〇円、昭和四三年度申告所得税二、九六六万八、〇〇〇円、加算税二九六万六、八〇〇円合計三、四八〇万一、〇五〇円の国税を滞納していたところ、被告国は同日被告蒐の原告に対する別紙二物件目録2記載の各土地についての清算金交付請求権を滞納処分により差押え、同日第三債務者たる原告にその債権差押通知書は到達した。よつて、被告国は、右交付請求権の取立権を取得したのであるから、原告が被告国に対して右清算金を支払うのと引換えでなければ、本訴請求に応じられない。

仮に、右主張が認められないとするならば、原告が被告蒐に対して清算金を支払うのと引換えでなければ、本訴請求に応じられない。

(被告松島興産株式会社)

被告松島興産株式会社は、本件2の(三)、(五)ないし(九)各土地につき、清算金二一二万一、四四〇円との引換えでなければ本訴請求に応じられないし、仮に原告主張のとおりであるとするならば、清算金一七五万七、九六九円との引換えでなければ本訴請求に応じられない。

四 〈省略〉

第三証拠〈省略〉

理由

一  〈省略〉

二  次に、原告と被告国、同津屋崎町、同野見山佐一、同株式会社日動製作所、同松島興産株式会社および同長谷薫太郎との間において判断する。

1  〈証拠省略〉によれば、請求原因1の(一)ないし(四)の各事実(但し、原告主張の各貸付金の利息の点は除く。)が認められる。

2  〈証拠省略〉によれば、請求原因2の(一)ないし(六)の各事実(但し、原告主張の各貸付金の利息の点は除く。)が認められる。

3  〈証拠省略〉によれば、請求原因3の(一)、(二)の各事実(但し、原告主張の貸付金の利息の点は除く。)が認められる。

4  原告は、本件各貸付金の利息についてその利率は三月分であつた旨主張し、〈証拠省略〉には右主張に沿う供述部分も認められるが、これは俄かに措信し難く、本件全証拠によるも他に右主張を認めるに足る証拠はない。

5  前記認定のとおり、〈証拠省略〉によれば、清算金算出の根拠とすべき本件各土地の適正評価額は別紙七計算表1の(二)に記載のとおりと認めるのが相当であり、また、その鑑定料(第一、二回)が合計一一万円であることは本件記録上明らかである。

6  請求原因5、6の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、また、被告松島興産株式会社は、同7の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

三  そこで、以上に認定の各事実に照らすと、本件は所謂仮登記担保契約の場合に該ると認められるのであるから、本件のように原告が本件各土地につき売買予約完結の意思表示をした場合には、原告は本件各土地を適正に評価された価額で自己の所有に帰せしめることができると解すべきところ、ただ、本件各土地の右適正評価額が債権者たる原告の債権額(清算のために要した鑑定料等の費用も含むというべきである。)を超えるときは、原告は右超過額を清算金として債務者、担保権設定者或いは第三取得者等の清算金交付請求権を有する者に支払うべきであり、しかも、その場合の本登記手続およびその承諾と清算金の支払いとは同時履行の関係にあると解するのが相当である(被告らもその旨抗弁している。)から、以下、原告の支払うべき清算金の有無、数額およびその支払うべき相手方(受取人)の範囲について判断する。

1  まず、清算金の有無およびその数額につき検討するに、前記認定のとおり、〈証拠省略〉によれば、本件各土地の鑑定評価額は別紙七計算表1の(二)に記載のとおりであるところ、右鑑定評価額を本件各土地の清算の場合に考慮すべき適正評価額と認めるのが相当であり、また、本件各土地の鑑定料は合計一一万円であるところ、本件各土地についての個々の鑑定料は(原告が主張するように貸付金債権の元本額によつて按分するのではなく)本件各土地の適正評価額によつて按分した額をその鑑定料とするのが相当であり、また、本件各貸付金元本を担保する本件各土地が複数の場合には、その本件各土地の個々の被担保債権の数額はその貸付金元本をその各土地の適正評価額によつて按分した金額とするのが相当である。

そこで、右の前提に立つて、本件各土地についての清算金の有無および数額を算出(遅延損害金は民事法定利率年五分による。)すると別紙八計算表2に記載のとおりとなる(その結果は別紙三清算金目録1および別紙四同目録2に記載のとおりとなる。)ことが認められる。

2  次に、右のとおり算出された清算金につき、誰が交付請求権を有するかを検討するに、別紙一物件目録1記載の各土地(本件1各土地)については、被告らは、被告道子を除き、いずれも担保権設定者或いはその登記を経由した第三取得者等とは認められないので、被告道子以外の被告らには自己に対する直接の清算金支払請求権はないというべきである。従つて、本件1各土地についての清算金はいずれも、被告道子に対し、原告主張の各本登記手続およびその承諾と引換えに支払われるべきである。

次で、別紙二物件目録2記載の各土地(本件2各土地)については、前記認定のとおり、被告松島興産株式会社は原告より後順位ながら本件2の(三)および(五)ないし(九)各土地の所有権を取得してその旨各登記を経由していることが認められ、また、〈証拠省略〉によれば、被告国は被告蒐に対し三、四八〇万一、〇五〇円の国税債権を有していたところ、昭和五〇年一〇月二〇日、被告蒐の原告に対する本件2各土地についての、清算金交付請求権を滞納処分により差押え、同日、第三債務者たる原告にその債権差押通知書を送達し、原告にその頃、到達したことが認められる。

そうだとすると、本件2の(三)および(五)ないし(九)各土地については、その旨の各登記を経由した第三取得者たる被告松島興産株式会社が原告に対し直接清算金支払請求権を有すると認めるべきであるから、右各土地についての清算金はいずれも、同被告会社に対し、原告主張の各本登記手続およびその承諾と引換えに、支払われるべきということになる。

また、右各土地を除く本件2の(一)、(二)、(四)、(十)および(十一)各土地については、被告国が滞納処分によつた前記手続(債権差押およびその通知書の送達)を履践したことにより、被告国は強制執行手続における差押および取立命令を得たと同様の地位に立つたと認めるのが相当であるから、被告国は、被告蒐の原告に対し有していた本件2の(一)、(二)、(四)、(十)および(二)各土地についての清算金交付請求権を差押え、その取立権を取得したというべきである。従つて、右各土地についての清算金はいずれも、被告国に対し、原告主張の各本登記手続およびその承諾と引換えに、支払われるべきということになる(なお、本件2の日および(五)ないし(九)各土地については、原告がその清算金の支払義務を負担するのは被告蒐に対してではなく、被告松島興産株式会社に対してであるから、被告国主張の清算金交付請求権の差押の効力は、右各土地については及ばないというべきである。)。

四  なお、被告永弘開発株式会社および同元木守は、いずれも請求原因各事実を明らかに争わないからこれらを自白したものとみなし、また、同村上繁夫、同三枝ヨシノ、同三枝保二、同三枝茂、同山本隆、同三枝直、同三枝サダエおよび同三枝稔は、いずれも民訴法一四〇条三項により請求原因各事実を自白したものと みなす。

五  以上の次第であるから、原告の本訴各請求は、被告道子に対しては、原告が本件1各土地につき、別紙三清算金目録1に記載の各金員を支払うのと引換えに、別紙五本登記手続目録1に記載の各本登記手続を求める部分は理由があるので認容するが、その余は失当として棄却し、被告蒐に対しては、原告が本件2各土地につき、別紙四清算金目録2に記載の各金員を支払うのと引換えに、別紙六本登記手続目録2に記載の各本登記手続を求める部分は理由があるので認容するが、その余は失当として棄却し、被告国、同津屋崎町、同野見山佐一、同株式会社日動製作所、同松島興産株式会社および同長谷薫太郎に対しては、原告が本件1および2各土地につき、右清算金目録1および2に記載の各金員を支払うのと引換えに、右本登記手続目録1および2に記載の各本登記手続をなすことの承諾を求める部分は理由があるので認容するが、その余は失当として棄却し、被告永弘開発株式会社、同元木守、同村上繁夫、同三枝ヨシノ、同三枝保二、同三枝茂、同山本隆、同三枝直、同三枝サダエ同三枝稔に対しては、いずれも原告の各請求は理由があるので認容することとする。よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小川良昭)

別紙一 物件目録1〈省略〉

別紙二 物件目録2〈省略〉

別紙三 清算金目録1〈省略〉

別紙四 清積金目録2

番号

物件目録2記載の各土地の番号

清算金の額(円)

清算金を支払うべき相手方(受取人)

(一)

(一)

五七三万九、九三三

被告国

(二)

(二)

一三万六、七二三

(三)

(三)

五万九、六〇〇

被告松島興産株式会社

(四)

(四)

八〇万九、七〇三

被告国

(五)

(五)

二六万五三六

被告松島興産株式会社

(六)

(六)

一万一、〇六九

(七)

(七)

一三万一、一二〇

(八)

(八)

一三五万二、九一〇

(九)

(九)

三〇万四、八一〇

(一〇)

(一〇)

九万三、六五八

被告国

(十一)

(十一)

二九万七、九九八

別紙五 本登記手続目録 1〈省略〉

別紙六 本登記手続目録 2〈省略〉

別紙七 計算表1〈省略〉

別紙八 計算表2〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例